アレン・オーエンズ教授とナオミ・グリーンさんによる東京でのアプライドドラマが終わりました。
今年は「亀の家族」「FOX」の2本のストーリーを持ってきてくれました。
新作の亀のお話では、昨年の新作「故郷」がスタート時に粗削りな印象だったものが回を重ねるごとに大きく変化しましたが、今回は1回目一般向けに行った時にすでにかなり完成されていてこれ以上変える必要がないのではないかと私は感じていました。
ですが学生へ向けて行うなかで「海と山どちらへ行きたいか」という質問に、「どちらも行きたくない。行くなら図書館」という予想もしていなかった発言にストーリーがこれまでと違う方向へ展開しました。それが結果的に「親(大人)が子供へ知識を伝える」ということを学生が経験する体験につながったのです。
もう一つのお話「FOX」ではアレン教授たちが行った後で、私が別の角度からストーリーをとらえた「FOX」のプレテキストを作り同じ学生たちへ行いました。
理解できないと思えた行動をとるキツネも角度を変えれば彼らの共感の対象となり、より深い対話を生み出しました。
終了後ある学生が「キツネと自分が重なって苦しい。私はキツネのような思いをしてきた。」と涙を流し、私はその学生と話をしながら「アプライドドラマは彼らを癒し励まし、他者とのつながりを見出していけるのだ」と改めて感じました。
通常アプライドドラマでは体験前に先入観をもたせないためにストーリーは公表しないのですが今回同じ話を二度学生が体験するという挑戦にアレン教授やナオミさんも興味をもってくれました。
アレン教授はキツネに共感した学生の多かったことに「それは欧米化された選択だ」とか、「他者の働きかけによって選択がかわるから選べない」という学生がいたことには「それは日本人的だ」とコメントし、なによりも学生たちがより深い理解と対話を行えたことをとても喜んでいました。
*学生の感想*
「2回目は自分たちで考えることが多く、改めてキツネの良さ、犬の良さ、鳥の良さを考えさせられました。」
「2回目ということで内容は知っていたけど、改めて想像したり、動物たちの心情とかを考えて意見を出し合っていると、また違った3匹のストーリーになっていて何回やってもいろいろ変わってくるんじゃないかと思いました。」
「今回の授業でみんなの心がちょっとだけわかった気がしました。アプライドドラマはやっぱり楽しいと思いました。犬、キツネ、鳥の心になって見て、それぞれの感情が持てました。人とのコミュニケーションが自然とできていい授業でした。」
「アプライドドラマでは毎回自分だったらどうなるかが問われるので自分の心と向き合う時間になる。(ネタバレのため中略)心はとても難しいものだと思った。これからも時間をかけて向き合いたい。」
「今日は24日に体験したアプライドドラマと同じ物語で体験しました。本来は知らない物語でやるそうですが、知っているからこそ新たな発展、展開があったり、そのことで新しい考え方、自分自身の犬、鳥、キツネにたいしてどう思うかも刺激になりました。自分は鳥の気持ちはあまりわからないですが、今回のでは共感できる部分もありました。」
アレン教授は「テキストはまっすぐ直線的に進むが、プレテキストは寄り道しながら進んでいく。」と教えてくれました。寄り道をすることで自分、他人、社会への想像力を広げ。想像することが多様性の理解と包括へつながっていくのだと私は思います。


